へんくう農業日記

こだわり農業の記録

イチジク栽培

 田布施は県内一のイチジク産地だ。なのに僕はイチジクを食べた記憶がなかった。そんな僕がイチジクの栽培を始めたのは、たまたま話が回ってきたからだ。作り手がいなくなった所を引き継ぐという話だ。イチジク栽培大学という講習会があるので経験も不要。
 田布施のイチジクはほとんどハウス栽培。早く熟れて高く売れるからだ。木はせん定して形を整え一直線に並んでいる。水やりはパイプで行う。自動の換気扇や暖房施設を整えている所もある。ビニールハウスは農場というより工場という印象だ。
 ハウスがゆえの大変さもある。冬に人工的に春を作るため、天気を見てはハウスを開け閉めする必要がある。農薬散布では暑いハウスに完全防備の息苦しい格好で入り、密閉空間で薬剤を噴霧する。気を付けないと倒れそうだ。
 収穫するまでは無収入で、地道な作業が続く辛抱の期間だ。熟れだしたら毎日次々に熟れていくので面白い。でもイチジクの木に休日はないので収穫も休みなしだ。
 良かったのは人にあげるとすごく喜ばれる事だ。珍しがる人、懐かしがる人、何度も来て買ってくれる人、ジャムを作る人もいる。この事が僕に来年も続けようと決心させた。来年は、取り組んでいる人は少ないが無農薬に移行したい。リクエストも多かったし自分のためにもいい。

山口新聞 『東流西流』 2010.12.9掲載
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