へんくう農業日記

こだわり農業の記録

食べ物の値段

 初めてスーパーマーケットで自分の名前のイチジクを発見した時、思わず記念写真を撮った。しかし値段を見てふと考えた。こんなに高いフルーツ、僕なら買わないだろう。しかしこれが安かったら僕の収入もそれだけ低いという事になる。県外の安いイチジクを見かけた時は、以前の僕なら「安い」と喜んでいただろうが、その時は「こんなに安かったら生産者に利益があるのか?輸送費もかかったろうし」と思うようになっていた。
 イチジクはまだ利益が出るからいい方で、お米はマイナスになるそうだ。労働力を勘案したらお米もイチジクも割に合わないと思う。農業だけでは生活できないという話はよく聞いていたが、これならやらない方がいいのでは?とさえ思う。でも農家の人はそれを承知でやっているのだ。そんな人達によって農業は成り立っているのだ。
 どうしてこんな事になったのだろう。どうすればいいのだろう。そう思ったら食べ物の値段のとらえ方が変わってきた。安い商品は農家の人に負担がかかっているのでは?と思うようになった。さすがにいつも高い商品ばかり買う事はできないが、自分が払ったお金が農家の人のためになると思うと、逆に高い商品を選びたくなる。産地も見るようになった。近い方が輸送費も安いし、地元に近い所に貢献したい。

山口新聞 『東流西流』 2010.12.16掲載
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