へんくう農業日記

こだわり農業の記録

脱サラ

 やりたい事があって会社を辞めた「かっこいい」脱サラではなかったのだが、今はもうサラリーマンに戻るつもりはなくなってしまった。辞めた後に山口県内で出会ったいろいろな人たちが僕の価値観をガラッと変えたのだ。
 その人たちは農業をはじめとしていろいろな事を自分でこなす人たち。世界各地を旅したり、いろいろな経験をして、行き着いた結論が農業だと言う人が多い。日本では農業従事者は少数派だが、世界的に見たらサラリーマンの方が少数派だそうだ。考えて見たら当たり前のことだ。食べ物は生きるために絶対必要なのだから。
 「百姓は百の仕事ができる人」と言った人がいた。百姓は作物をいろいろ作ったり、家畜を飼ったり、機械が壊れたら自分で直したり、家を修繕したり、小屋ぐらいなら自分で建ててしまう。生きる力がとても強く、きっと経済が崩壊しても戦争が起きても生きていけるだろう。世界ではそれぐらいの事はけっこう普通で、日本人が一番生きる力が弱いという。
 そんな話をいろんな人から聞くうちに、僕も生きる力を身に付けなければと思うようになった。そのうち、同じように農業を始めたいと思っている人が集まって、共同で田んぼを始めることになった。そして僕はUターンし、志を同じくする若者たちと共同生活をしながら、新しい生き方への挑戦が始まった。

山口新聞 『東流西流』 2010.11.4掲載
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